前回は地震雲を長年研究し、MEGA地震の予測を行った元奈良市長の故・鍵田忠三郎さんをご紹介しました。
そんな鍵田さんと同じく、地震予知先進国の中国でも地震雲を前兆現象の一種ととらえて予測・予知に役立てる研究が行われていたのです。
そこで今回は、中国での地震雲を使った地震予知・予測の研究についてご紹介します。
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中国でも地震雲による地震予知・予測が研究されていた
*引用:日本経済新聞
中国は日本同様に地震多発国です。
過去にはいくつものMEGA地震が発生していますが、それらを記録した古文書には、地震の前兆現象として、空に横たわる長く一直線に伸びる雲の記述が度々登場します。
・・・長蛇の如く横たわること空際に亘る、久しく散らずば勢い必ず地震う
*引用:『重修隆徳県誌』
この古文書の記述から分かる通り、中国ではMEGA地震の発生前に地震雲が度々目撃されており、人々はそれをもとに予測・予知していました。
- 空の端まで蛇のように長く横たわる(長く一直線に伸びる)
- 長時間崩れずに残る
この2点は地震雲の典型的な特徴。
鍵田さんも同様の点を指摘していることから、太く直線でいつまでも形が崩れない雲は地震雲だと考えられます。
地震雲を地震予測に取り入れた中国の研究者
1970年代、前述の古文書に注目し、本格的に地震雲の調査研究に取り組んだ中国人がいます。
地球物理学者で国家地震局・科学院物理研究所研究員だった呂大炯(リョ・ダイケイ)氏です。
呂氏が元々研究していたのは地中岩盤の歪み、地電流や電磁気の異変など。
そこに地震雲という前兆現象を加えることで、予測・予知の精度が高まると考えたのです。
呂氏が行った地震予知
呂氏が地震の予知・予測に用いたのは次の4点です。
- 地中岩盤の歪みをレーザーで計測
- 地中の地電流を計測
- 地中からの電磁気を計測
- 一直線に伸びる雲の観測
上記4点から総合的に判断するようになった結果、岩盤の歪みや地電流・電磁波に異変を計測すると、近いタイミングで一直線に伸びる雲が出現する(逆の場合もある)ことを発見。
それについて呂氏は自書のなかで次のように語っています。
地震雲の時空特徴が、私のレーザー計などの手段で地震予知研究時発見された突発的な前兆の時空特徴と一致していることが発見された、それで私は即座にこれが地震前兆のひとつであると確認した・・・
*引用:『雲と地震予知の話』(呂大炯著 柳修影訳)
呂氏による地震予測成功の事例
*引用:『雲と地震予知』(呂大炯著 柳修影訳)
岩盤の歪みや地電流・電磁波と帯状地震雲の間に相関関係があることに気付いた呂氏は、次々に地震の予知・予測を的中させていきます。
その予測実績は1977年からの3年間で75件中64件の的中。(的中率85%)
すべてM4~8クラスの地震であり、規模、発生日時、震源エリアまで特定したのです。
そのなかにはフィリピンやインドネシアなど、遠隔地で発生したMEGA地震もありました。
この呂氏の高い的中率に関して、中国の中央気象局気象科学院研究所・郭思銘副所長は次のように述べています。
この種の帯状雲というものは天気予報には使われない、もしこれが地震と関係があるとすると、これは少しもおかしい事ではないと思う。 気象の仕事に携わる人々は従来地震と関連付けて見ようとはしなかった・・・関連を確立するとなると、とても有益な事業だと思う
*引用:『雲と地震予知の話』(呂大炯著 柳修影訳)
さや豆形の地震雲でも予知成功
地震雲のほとんどは直線帯状ですが、稀に別の形状となって表れることがあります。
その一つが上の画像のような『さや豆型』。
これはめったに出ない地震雲の一つ。
単なる気象のレンズ雲やつるし雲と混同されやすいのですが、呂氏はこのさや豆型地震雲でも予知を成功させています。
上の写真は1979年2月15日に北京近郊で撮影されました。
呂氏が地震雲であると指摘すると、中国の近場で地震が発生。
さらに翌16日に南米のペルーでM7.0、3月5日には北京から150キロ離れた唐山市でM5.0の地震が発生したのです。
まとめ
今回は帯状の地震雲を地震予測に利用した中国の研究者・呂氏の実績についてご紹介しました。
呂氏の地震予知・予測は非常に高い的中率を誇ります。
まだまだ未解明な部分が多い地震雲ですが、呂氏の的中率を考えればMEGA地震の前兆現象であることは間違いありません。
よって、本記事でご紹介したような地震雲を目撃した時は十分に備えるようにしてください。
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●作成者:原 経厳
・・・元番組制作ディレクタープロデューサー、長年にわたり地震前兆関連の調査・取材等を続けつつ、現在はフリーで映像コンテンツ制作プロデュース、短編映画製作プロデュース等に携わる。
●構成・編集Support:原 洋
・・・フリーライター
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