前回の記事では世界中の国々で前兆現象をもとに地震予測の研究が行われてきたことをご紹介しました。
とくに中国とギリシャでは実際にMEGA地震の予測に成功しており、前兆現象を研究することは決してオカルトではないということが分かります。
では、日本における地震予測の研究はどうなっているのか?
今回は、日本における前兆現象研究の歴史をご紹介します。
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日本における地震予測・研究の歴史:江戸時代
1855年11月(江戸時代末期)、関東地方南部でマグニチュード7クラスのMEGA地震(安政大地震)が発生しました。
当時の様子を記した『安政見聞誌』によると、この安政大地震の直前に『天然磁石の磁力が失われ釘が落下』したり、『火の玉や発光現象』が見られたりといった奇妙な現象が報告されていたそうです。
これらの現象から地震と電磁気の関係を疑った学者の佐久間象山(1811年~1864年)は、地震の前の磁力低下に反応するような地震予知機を製造します。
また、蘭学者・宇田川興斎(1821年~1887年)は『地震預防説』を発表し、地下で発生する電気に着目。
避雷針と同じ原理で避震孔の設置を提唱しました。
このように電磁気の異常とMEGA地震の関係性は江戸時代から指摘されており、当時の名だたる学者が真剣に研究していました。
その後も少数ながら電磁気現象に関心を寄せる学者がいたのですが、当時の技術では研究に限界があり、大きな成果はありませんでした。
そのため、電磁気現象を地震の前兆と捉えて予測する研究は衰退し、オカルトの一つとして認識されるようになったのです。
日本における地震予測・研究の歴史:20世紀前半
安政江戸地震以降、明治、大正と時代が流れる中で、被害の大きなMEGA地震はいくつか発生しています。
しかし、その間も電磁気現象に着目し予測に活かそうとする飛躍的な進展はありませんでした。
そんな中、1923年(大正12年)9月1日にMEGA地震の関東大震災(M7.9)が発生。
10万人以上の人々が亡くなるという未曾有の事態となりました。
関東大震災で目撃された前兆現象
関東大震災の発生前には、各地で様々な前兆現象が報告されています。
- ウナギやネズミ・カニなどの異常行動
- 植物の狂い咲き(作家・芥川龍之介が狂い咲きを目撃。詳細はコチラ)
- 発光現象・地震光
とくに発光現象や地震光の目撃証言は多く、日本地震予知クラブ会長だった亀井義次さんは著書『地震の起こるとき;やっぱりナマズは知っていた』(ダイヤモンド社)の中で次のような証言記録を取り上げています。
8月28日(地震4日前)の午後8時から9時に渡って、火柱が立っていた。 この火柱は稲妻のような色をしていて、音響はまったくなかった。 形状は花火のように地上から空中に立つと、四方八方に割れて、清澄公園のあたりから本所の西方にかけて最もよく光り、昼のような明るさであった。
震災の前々日(8月30日)、東京市の空の一部に猛烈かつかなり長時間にわたって音響なしの光がみえた。 近所の人も最初は珍しげに見物していたが、次第に不気味となり、眺める人もだんだんと減り家に入った
9月1日(地震発生当日)の朝、深川より東京湾の方でピカピカ光っていた。 付近の人々もこれをみて不思議に思っていた。
このように、関東大震災の発生前には前兆現象があちこちでおきていたのです。(地震光についての詳細はコチラ)
さらに漁師達が地震前兆の知識を持っていて、地震光を見て危機回避行動した例まであります。
(地震発生が迫る)当日の11時頃、熱海沖にある初島付近で、水平線上に稲妻が走った。 音(雷鳴)は聞こえなかったが、「大変なことがおこるぞ」と話し合い、漁をやめて岸に引き返した。
このように、関東大震災の前には電磁気現象が多発しており、そこから危険を察知して難を逃れた人までいたのです。
前兆現象研究の停滞
関東大震災発生前には様々な前兆現象が目撃されていたにも関わらず、その後も前兆現象の研究は進みませんでした。
一部の研究者は地震光などの前兆現象に注目しましたが、公的機関で電磁気現象に着目したところはなかったのです。
たとえば、大正から昭和初期に膨大な前兆現象記録を調べていた地震学者の武者金吉さんは、東京帝国大学地震研究所在任中に、『北伊豆地震』(M7.3 死者行方不明者272人)で起こった発光現象の調査を申し出ています。
しかし、当時の所長から「あれは送電線のスパークだ、あんなものを調べてもしようがあるまい」と言われてしまったのだとか。
このように、国は電磁気学の見解に目を向けず、高名な地震学者達でさえも地震光を迷信扱いにしていました。
日本における地震予測・研究の歴史:20世紀後半から現在
1995年に発生した阪神淡路大震災。
多くの死傷者を出したMEGA地震ですが、これをきっかけに前兆現象による地震予測が再び注目されるようになりました。
なぜなら、阪神淡路大震災の直前には動物植物などの異変が数多く起こっていたから。
当時大阪市立大学理学部部長だった弘原海 清(わだつみ きよし)さんは、地震の前に関西地区で起こった異常現象の目撃証言を集めました。
こうして集められた異常現象の目撃証言は膨大な数になり、弘原海さんはそれらを『前兆証言1519』(東京出版)という書籍で紹介しています。
この本で紹介された前兆現象のなかで主なものは、
- 動物の異常行動
- 植物の異変
- 月が赤く見える
- 奇妙な形の雲が発生する
- 電化製品が壊れる
など。
また、ラドンガスの異常放出や大気イオンの濃度上昇が地震前に起こっていたと指摘する学者もいます。
これらを総合的に考えた結果、地震発生前には強い電磁波が放出されており、それがあらゆる異常の原因となっている可能性が高い事がわかっていったのです。(実験立証記録はのちほど…)
地震前に強い電磁波が発生するメカニズム
電磁波を産む主な要因は、大地の下で岩石岩盤に巨大な圧力が掛かるからだと言われています。
地震が近づくと大地が動き、巨大な圧力が広範囲の岩盤岩石に加わり、それが電磁波を発生させます。(圧電現象)
そして、この電磁波が地上に吹き出すことで動植物の異変や地震光といった前兆現象が起きると考えられています。
実のところ、ほとんどの物体は圧力や摩擦が加えられることで電荷を帯び、電磁波を放ちます。
ただし、花崗岩(カコウガン)は石英を多く含んでおり、石英には電導性が高く電荷を帯びやすいという特性があります。
大地にはこの花崗岩のように電磁波を放出しやすい岩石が大量に埋まっていますから、大きな圧力が加わると大量の電磁波が発生するのです。
ちなみに、2000年10月に起きた『鳥取西部地震』(M7.3 最大震度6強)では、地震に先行して地下で放射された電磁波が世界で初めて観測されました。
*参考外部リンク:https://www.kyoto-su.ac.jp/project/st/st05_04.html
まとめ
この記事では日本における地震予測・研究の歴史についてご紹介しました。
江戸時代から前兆現象を地震予測に活かそうと考えた人はいたものの、残念ながらそれが主流になることはありませんでした。
その一方で、MEGA地震が発生する度に多くの前兆現象が目撃されており、もはや前兆現象と地震の関係を無視することはできません。
そこで次回(【MEGA地震を予測せよ!】前兆現象の研究と歴史Vol.3 先駆的な研究者の貴重な実験記録)は、ある学者が前兆現象と地震の関係について実験した貴重な記録をご紹介します。
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●作成者プロフィール
原 経厳・・・元番組制作ディレクタープロデューサー、長年にわたり地震前兆関連の調査・取材等を続けつつ、現在はフリーで映像コンテンツ制作プロデュース、短編映画製作プロデュース等に携わる。
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